2019年07月の税務ニュース
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民法改正の概要
~ 相続関係の主な改正について その1~
「民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」が国会で平成30年7月6日に可決・成立し、同月13日に公布され、昭和55年以来約40年ぶりの大幅な見直しとなりました。施行日は原則令和1年7月1日ですが、一部異なるものもあります。
【1】 相続法改正の経緯
平成25年9月の嫡出でない子の相続分についての最高裁違憲判決がきっかけとなり同年12月に「民法の一部を改正する法律」が成立し「嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の法定相続分の2分の1」とする部分が削除され、嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じになりました。
この改正法案を国会で審議する過程で各方面から民法改正が及ぼす社会的影響に対する懸念や配偶者保護の観点からの相続法制の見直しの必要性などの問題提起がなされ、今回の大幅な改正に至りました。
【2】 改正法の概要
(1)配偶者の居住権を保護するための方策
「1」配偶者短期居住権の新設 《施行日:令和2年4月1日》
被相続人の持ち家(自宅)に住んでいた配偶者を保護するためのもので、遺産分割などで誰か別の人がその持ち家を相続することになっても、最低6カ月間はその家に住み続けることができる権利を法的に認めるものです。
「2」配偶者居住権の新設 《施行日:令和2年4月1日》
これは「1」よりさらに長い期間、配偶者の居住権を保護するもので、被相続人の持ち家に対して、その配偶者が亡くなるまで又は一定期間、配偶者がその持ち家に住み続けることができるようになります。遺言や分割協議で設定することが出来ます。
この配偶者居住権は相続財産として評価(配偶者の平均余命などを基に算定)します。居住権が設定されたときの土地建物の評価額はこの居住権の評価額を控除した金額になります。その後その配偶者が死亡したときは居住権は消滅し、土地建物の評価額はもとに戻ります。
(2)遺産分割等に関する見直し
「1」配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示推定規定)
「2」遺産分割前の払戻し制度の創設等
「3」遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
(3)遺言制度に関する見直し
「1」自筆証書遺言の方式緩和 《施行日:平成31年1月13日》
「2」遺言執行者の権限の明確化
「3」法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設 《施行日:令和2年7月10日》
(4)遺留分制度に関する見直し
(5)相続の効力等に関する見直し
(6)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
上記(2)~(6)の内容については次月以降で紹介していきます。