2019年08月の税務ニュース
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民法改正の概要~ 相続関係の主な改正について その2~
先月に引き続き、改正法の内容のうち「遺産分割等に関する見直し」について見ていきます。 施行日は令和1年7月1日です。
【1】配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示推定規定)
遺産分割を行う場合、相続財産には被相続人の亡くなった時点での被相続人名義の財産だけではなく、過去に贈与を受けた一定の財産などを特別受益として計算に含める必要があります。今回の改正で婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し居住用の不動産を遺贈又は贈与した場合については、長年にわたる配偶者の貢献に報いることや老後の生活を保障する趣旨から、遺産分割においては原則として特別受益として取り扱わなくてよくなりました。
これにより、被相続人意思を尊重した遺産分割ができるようになります。
【2】遺産分割前の払戻し制度の創設
被相続人の預貯金は遺産分割の対象財産であるため相続人が複数いる場合には遺産分割が終了するまで単独で払い戻しをすることができませんでした。改正により生活費や葬儀費用の支払い、被相続人の借金の弁済などの資金需要に対応出来るよう、遺産分割前でも一定の金額の払戻しが受けられることになりました。
家庭裁判所の判断を経る方法と経ずに一定割合の払戻しを受ける方法の2つがあります。家庭裁判所の判断を経ずに払戻しを受ける場合の単独での払戻しの限度額は相続開始時の預貯金残高の3分の1に単独で払戻しをしたい相続人の法定相続分を乗じた金額相当額となります。例えば預貯金残高が3,000万円、法定相続分が2分の1の相続人の場合の限度額は、500万円(3,000万円×1/3×1/2)です。
【3】遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
相続人が複数いる場合にその相続人の一人または複数人が相続財産を勝手に処分したことにより相続人間の不公平が生じないようにするための制度が設けられました。
今までは、相続開始から遺産の分割協議が行われるまでの間に相続人のうちの誰かが勝手に処分してしまった財産については、おかしな話ですが分割協議の際には処分された財産は存在しないため、相続財産には含まれないこととなっていたため、民事訴訟を起こしても請求は困難でした。
今回の改正で「処分された相続財産も分割時に遺産として存在するものとみなすことができる」という条文がはいることにより、今後は不当な出金があった場合でもその出金も分割時にはあったものとみなして計算をすることができるようになりました。
上記のように遺産分割について民法で色々と定められていますが、それにこだわらず相続人間での話し合いがつけば自由に相続財産を分割することができます。