2012年09月の税務ニュース
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消費税増税に対する実務上の注意点(その1)
先日、平成26年4月から8%、27年10月から10%へと消費税率が引き上げられる法案が成立しました。大阪中央会計事務所では消費税導入時から、個人事業者、中小企業を苦しめる消費税に対し一貫して反対の立場を貫いてきました。
消費税率引き上げは税負担の増加だけではなく、実務上さまざまな注意点があります。実務的な諸対策や注意点を2回にわたりご紹介します。
<売掛金・買掛金の留意点>
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3月31日(9月30日)での締め切りの必要性
- 事業者によっては15日締めなど、末日以外の請求締切日を設けている場合がありますが、税率引き上げに際し、施行日の前日である平成26年3月31日(平成27年9月30日)で請求を締めておく必要があります。これは、貸倒れや対価の返還等(返品や値引き、割戻し)があった場合、売掛金(買掛金)発生時点での消費税額が対象となるためです。今回の税率引き上げは短期間に2回行われるので、5%、8%、10%の売掛金(買掛金)が混在する可能性があり、整理が必要です。
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施行日をまたいだ取引
- 施行日前に出荷され、施行日後に着荷した商品があった場合に新税率になるか旧税率になるかについてですが、売主側が旧税率によって消費税を転嫁している場合には、買主側も旧税率で仕入税額控除の計算を行います。請求書が内税方式の場合、何%で課税されているか判明しないことがありますので、相手方の便宜のため施行日前後の請求書には税率を表示するなどの配慮が必要です。
<棚卸資産に関する取扱い>
棚卸資産については、施行日前に仕入れたものか、施行日後に仕入れたものかを明らかにしておく必要があります。特に在庫期間が長い棚卸資産については5%、8%、10%が混在する可能性がありますので注意しなければなりません。
棚卸資産の返品については、施行日前に仕入れたものについては旧税率、施行日後に仕入れたものについては新税率で計算するのが原則です。
しかしながら、取引量が多く頻繁に返品が行われる事業者の場合、返品された商品の仕入れが施行日前か施行日後であるか判然としない場合があります。この点については、例えば「平成26年4月の1ヶ月間における返品は26年3月以前に仕入れた商品の返品とする」と取り決めた場合には、平成26年4月中に行われた返品については全て旧税率が適用された商品の返品として計算してよいこととされています。