2012年10月の税務ニュース
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消費税増税に対する実務上の注意点(その2)
前回に引き続き、消費税率引き上げ時における実務上の注意点をご紹介します。
<短期前払費用の取扱い>
1年以内の短期前払費用について、支出した日の属する課税期間の課税仕入れとすることができますが、施行日前に支出した短期前払費用に施行日以降の期間が含まれている場合の取り扱いはどうなるでしょうか。
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支払った消費税額が全期間について5%の場合
- 平成26年1月1日に1年分の短期前払費用を支払う際に、旧税率(5%)で1年分の消費税を加算して支払ったとします。この場合、5%の1年分が税額控除の対象となり、支払日である平成26年1月1日の属する課税期間(事業年度)に全額を仕入れ税額控除することができます。
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施行日前は5%、施行日後は8%の消費税を支払った場合
- 平成26年1月1日に、施行日前の期間である1月1日から3月31日の分は5%、施行日後の4月1日から12月31日の分に対しては8%の税率で消費税を支払ったとします。原則は、支払日である平成26年1月1日の属する課税期間(事業年度)に、1年分の消費税額を仕入税額控除します。ただしこの場合、控除できる金額は105分の5ですので8%で支払った実際の消費税額より少なくなります(一定の要件を満たす場合には特例があります)。
<経過措置>
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契約の前倒しや見直し
- 施行日の半年前である平成25年10月1日を指定日とし、指定日前に締結した工事の請負契約、資産の貸付け等については旧税率を適用するとの経過措置が設けられました。大きな工事を予定している事業者は、着工・完成は先でも前倒しで契約を締結するなどの検討が必要となるでしょう。
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実務上の注意点
- 経過措置はこのほかにも多くの規定が設けられていますので、事前に確認が必要ですが、今回は特に注意が必要なものを取り上げます。
- 前売りの乗車券
- 例えば、4月2日に乗車する予定の新幹線の切符を3月30日に買った場合のように、施行日前に購入した乗車券は、その使用が施行日後であっても旧税率が適用されます。
- 公共料金等
- 電気・ガス・水道・電話の料金等で、施行日である平成26年4月1日から4月30日までの間に請求金額が確定するものについては旧税率が適用されます。4月ないし5月に支払うものについては、領収書等で適用税率をよく確認する必要があります。