2023年04月の税務ニュース
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消費税のインボイス制度について(6)
今回は、10月より実施されるインボイス制度において、注意すべき点等をご説明します。
1.免税事業者からの仕入れについて
免税事業者からの仕入れについては、取引への影響に配慮して経過措置が設けられており、制度実施後
3年間は、消費税相当額の8割、その後3年間は5割を仕入税額控除が可能とされています。
簡易課税制度を選択している場合は、インボイス制度実施後も計算方法に関して変更はありません。
2.課税事業者が新たな取引先から仕入れを行う場合
新たな取引先からの仕入れの場合、取引条件を設定するため、相手が適格請求書発行事業者かを確認する
必要があります。免税事業者からの仕入れは、経過措置後、仕入税額控除ができないことをお互い理解
しておく必要があります。消費税相当額の支払いの有無について、互いに認識のずれがないように注意
して下さい。
3.仕入先である免税事業者との取引について
仕入先との関係において、どのような条件で取引するかについては、基本的に取引当事者間の自主的な
判断にゆだねられます。しかし、取引上の地位が相手方に優位な立場である場合、その地位を利用して
不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法上の問題となる恐れがあります。
いくつか例をあげてみます。
①取引対価の引き下げ
免税事業者との取引価格の交渉において、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を
設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合。
②商品・役務の成果物の受領拒否、返品
取引上の地位が有利な事業者(買手)が、仕入先から商品を購入する契約をした後において、
仕入先が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否すること。また明確な理由なく返品をして
仕入先に予測できない不利益を与えること。
③協賛金等の負担の要請等
取引上の地位が有利な事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である
仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れる代わりに、別途、計算根拠が明確でない協賛金、
販売促進費等の名目で金銭の負担を要請すること。
④購入・利用強制
取引上の地位が有利な事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である
仕入先に対し、取引価格の据え置きを受け入れるが、その代わり、当該取引に係る商品・役務の購入
を要請すること。
⑤取引停止
取引上の地位が有利な事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である
仕入先に対し、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような著しく低い取引価格
を設定し、不当に不利益を与え、これに応じない相手方との取引を停止した場合。
⑥登録事業者となるような強い要請等
取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるように要請することがあります。これに対しては、
独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、課税事業者にならなければ取引価格を引き
下げる、応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通知すること。