2023年11月の税務ニュース
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インボイス制度と振込手数料
10月からインボイス制度が始まりましたが、取引先から振込手数料についての文書を受け取った方が多いと思います。今月は、振込手数料についてご説明いたします。
売掛金が振り込まれる際に、買い手が支払う金額から振込手数料を差し引く場合があります。インボイス制度が始まってからも、このような取引は行われています。この場合の振込手数料の適格請求書は、金融機関から買い手側に発行されます。
1.売り手が買い手に対して適格返還請求書(返還インボイス)を交付する
売掛金から振込手数料を引かれた場合「売り手が買い手に対する振込手数料分の値引きに応じた」と認識し、適格返還請求書を発行します。
適格返還請求書の記載要件
・適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
・対価の返還などを行う年月日
・対価の返還などのもととなった取引を行った年月日
・対価の返還などの取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
・税率ごとに区分して合計した対価の返還などの金額(税抜または税込)
・対価の返還などの金額に係る消費税額等または適用税率
2.売り手が買い手に対して仕入明細書を交付する
買い手が適格請求書発行事業者であれば、売り手が買い手に対して仕入明細書を発行することが出来ます。これは、振込手数料を「売り手から買い手に対して支払った手数料」として扱う方法です。
仕入明細書とは、買い手が売り手に対して支払いを行う際に発行する明細書のことですが、本来との取引とは別に、売り手と買い手を逆にした「手数料の取引」が発生したものとして処理します。
仕入明細書の内容について買い手に確認してもらうことが必要で、買い手も適格請求書発行事業者でないと使用できない方法です。
3.売り手が買い手から金融機関の適格請求書と立替金精算書を受取保存する
「売り手が負担する振込手数料を買い手が立て替える」という処理を行います。買い手が一度振込手数料を立て替え、売り手に支払額が入金した時点で立替金を精算したとみなす方法です。
振込手数料を立替金扱いで税額控除の対象にするためには、売り手側が下記の2つの書類を受取り、保存する必要があります。
・金融機関が発行した適格請求書
・買い手が発行した立替金精算書